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第45回ホリスティックフォーラム(大阪)

平成10年3月22日(日)

食生活と免疫力
<0-157食中毒から得た教訓>

大阪大学微生物病研究所、講師、医学博士 永山憲市氏

 
 一昨年、日本国内で猛威を振るった腸管出血性大腸菌O157:H7(O157)は、昨年も患者千人以上、5人の死亡例を出し、O157のもつ毒性あるいは感染力の強さと恐ろしさをまざまざと見せつけています゜我々は多くの不幸な出来事から多くの教訓を得ました。その教訓を今後に活かして我々の健康のため、あるいは安全な食生活の確立のために役立てていくという積極的な姿勢が今まさに必要だと思います。
 その教訓としての第一は、食中毒という病気があまりにも身近で、ありふれたものであったために「食中毒で死者がでるなんて滅多になく、食中毒なんて大した病気ではない。」というように食中毒をなめてかかり、食中毒予防や食中毒菌に対する意識が低かったという事です。実際のところ一昨年の夏まで、O157という大腸菌のことを知っていた医療従事者がどれほどいたでしょうか。あまりにも我々はO157を含めた食中毒を引き起こす細菌に関して無知だったため、正確な知識に基づく有効な対応がうまくできなかったんです。また、「日本の医療は世界最高水準だから、食中毒なんて薬で簡単に治せる。」というような医療に対する過信が我々の心の中にあったことも否定できません。

 さらに教訓の第二は、我々の食生活に対する意識に問題があったということです。先進国一般に広まっている生きた細菌が存在しようもないようなレトルト食品やインスタント食品、あるいは電子レンジで「便利で簡単にすぐできる」という考えに基ずく食生活、また食生活とはちょっと離れますが、文具にまでも広がっている抗菌グッズの流行に代表されるような潔癖なまでの生活環境が我々が抵抗力をつける機会、つまり細菌などの外敵に接し多少なりとも体の中で免疫反応(軽い炎症反応)をひき起こして免疫力=抵抗力をつけて、外敵を排除する能力を獲得するチャンスを奪っているのではないかということです。O157やサルモネラによる食中毒はアメリカやヨーロッパ、日本等の先進国で大発生し多くの死者が毎年報告されるのですが、アフリカやアジアの発展途上国ではほとんど見られないことからも、人間の手が入りすぎた(文化的すぎる?)食物は我々から抵抗力をうばっているのかもしれません。それでは、我々はこれから食中毒から身を守るためにどのようなことを学べばよいのでしょうか。短期的な予防としては、どのような食中毒菌があるのか、食中毒菌はどのような食財に潜んでいるのか、食中毒菌はどのような特徴を有しているのか、をまず理解することだと思います。そして、さらに長期的な予防としては食生活を通じてO157をはじめとする食中毒菌に対する免疫力(抵抗力)をつけるように努力することです。

永山憲市(ながやまけんいち)

大阪大学微生物病研究所講師、医学博士
平成元年、徳島大学医学部医学学科卒業
  同年、大阪府成人病センター、内科
平成5年、大阪大学大学院医学研究科博士課程終了
  同年、ケニア中央医学研究所、国際協力事業団(JICA)、派遣専門家(感染学)
平成6年、大阪大学微生物病研究所、細菌感染分野、助手
平成8年、大阪大学微生物病研究所、細菌感染分野、講師現在に至る