タイムスケジュール 

10:00

開場

10:25

実行委員長挨拶

 シンポジウム実行委員長 愛場庸雅

(大阪市立総合医療センター耳鼻咽喉科部長)

10:30〜11:30

代替から統合へ-ホリステイック医療への道

 上野圭一(翻訳家・鍼灸師、総合研究所主宰)

11:30〜12:30

長期生存のがん患者に学ぶ

-“がん患者学”から見えるもの

 柳原和子(ノンフィクション作家、「がん患者学」著者 )

12:30〜13:30   

昼休み

13:3014:30

ホスピス医が語るスピリチュアルケア

-よりよき生を求めて

山崎章郎(聖ヨハネ会桜町病院ホスピス科部長)

14:30〜14:50

リラクゼーション

「乳がん術後のリハビリテーション&フィットネス」

梅田陽子 (京都大学総合人間学部非常勤講師)

14:50〜15:10

休憩

15:1017:10

パネルディスカッション     

がんとホリスティック医療-代替から統合、そして…

[司会]愛場庸雅・黒丸尊治

[指定発言]帯津良一

(帯津三敬病院名誉院長、日本ホリスティック医学協会会長)

[パネリスト] 上野圭一、柳原和子山崎章郎帯津良一

17:10

支部長挨拶

日本ホリスティック医学協会関西支部長 

黒丸尊治(洛和会音羽病院心療内科部長

17:30〜19:30

Net Working パーティー





実行委員長挨

シンポジウム実行委員長 愛場庸雅(大阪市立総合医療センター耳鼻咽喉科部長)

 ホリスティック医学シンポジウム2001大阪にご参加いただき、有難うございます。今回のシンポジウムでは「がん」をテーマとして取り上げてみました。いまや日本人の3人に1人は「がん」で死ぬという時代です。これほど身近な病気でありながら、そしてその治療には多くの研究者の莫大なエネルギーが注ぎこまれていながら、実際にはわかっていないことのほうが多く、いろんな情報が錯綜しているのが現状です。「がん」を宣告された方ご本人とご家族は、多かれ少なかれ混乱と苦しみにさいなまれることでしょう。しかし、もう一度ホリスティック医学の視点から「がん」を見直してみると、「がん」に対する考え方、取り組み方も違ってくるように思います。
 最近ようやく「ホリスティック医学」という言葉も少しずつ市民権を得てきているように思いますが、まだまだその本質的な意味が十分正しく理解されていない面もあります。おそらく21世紀はホリスティックな医療の時代になるでしょう。これからは実際の臨床の場において、ホリスティックな医療をどう展開して行くのかを考える場面にさしかかってきています。本日参加された皆様の一人一人が、これからの医療について考えて頂けることができるような、そして本日の話の中からなにがしかの「気付き」を得て頂くことができるような、有意義なシンポジウムにしたいと願っております。

支部長挨拶

日本ホリスティック医学協会関西支部長 黒丸尊治(洛和会音羽病院心療内科部長)

この度は、ホリスティック医学シンポジウム2001大阪にご参加頂き本当に有り難うございました。今回はホリスティック医学において、もっとも関心の深いテーマであるがんを取り上げてみました。がんと言うとホリスティック医学では、ややもすれば、どうしたらがんを治すことが出来るのかといったことばかりが論じられがちだったように思われます。もちろん、様々な代替療法を駆使して、がんを克服する試みはとても重要ですが、しかしそれだけでは片手落ちです。がんが治る、治らないといった次元の話だけではなく、心やスピリチュアルな側面をも含めた視点から、生命の質や死の問題についても積極的に取り上げ、そこからよりよき生を考えていくことが、これからのホリスティック医療には必要なことではないかと考えています。
 そこで今回は、このような広範な視点から、がんのホリスティックなアプローチとは何かを考えていこうと思い、上野圭一先生、柳原和子先生、山崎章郎先生、帯津良一先生といった、ホリスティックな視点や経験を持つ4人の先生方においで頂くことに致しました。きっと、みなさんの期待に添える有意義なお話やディスカッションが聴けることと思います。
 また、リラクゼーションタイムでは、乳がん患者の運動療法なども実際に指導している梅田陽子さんに来ていただくことに致しました。会場のみなさんにも実際のリラクゼーションを体験していただきたいと思っております。
 シンポジウム終了後には、ネットワーキングパーティーも予定しております。講師の先生方と、直接お話をしていただける数少ない機会であるとともに、様々な方々との情報交換ができる場でもあります。一人でも多くの方々のご参加をお待ちしております。

代替から統合へ‐ホリスティック医療への道

上野圭一(翻訳家・鍼灸師、総合研究所主宰)

日本にはさまざまな代替療法があり、それぞれかなりの実績をあげ、サプリメントなどを含めれば巨大な市場を形成しているにもかかわらず、まだ「代替医療」という枠組みが構築されていない。CAM(相補代替医療)の学会ができ、一部の医科大学で研究や教育がはじまり、市民的な運動がはじまったとはいえ、それらはじつにささやかなものであり、国家に認知を迫るほどの力はまだない。ましてや統合医療は、先行的に学会こそ組織されたものの、それはいわばアドバルーンに等しいともいえる。
 そもそも代替医療の枠組みがなければ統
合のしようもないというのが現実であろう。とすれば、その先にくるべきホリスティック医療への道は日暮れて遠しということになるはずだが、日本のホリスティック医療の関係者の顔が妙に明るく、絶望感や無力感にとらわれているようにみえないのはなぜだろう?
 それはおそらく、「ホリスティック医療」という形式がどこかにあって、関係者がその実現を目指しているわけではなく、医療というものは元来がホリスティックなものであるという信念のもとに、「いい医療」の実現を目指しているからではないだろうか?
 医療には人間や社会や地球環境にとって「わるい医療」と「いい医療」しかなく、医療が元来の姿をとれば、それがホリスティックな医療ということになるという、きわめつきの楽観主義に支えられているのが、われわれホリスティック医療関係者なのだということになるのだろう。先がみえないこの時代に、愚直なまでに楽観的でありつづけることの特異な力を、そろそろみせつける時期にきているような気がする。

プロフィール
上野圭一 (うえのけいいち)
 1941年、兵庫県宝塚市生まれ。早稲田大学文学部英文科、東京医療専門学校卒。日本ホリスティック医学協会副会長。日本相補・代替・伝統医療連合会議理事。日本統合医療学会理事。翻訳家。鍼灸師。
 著書に『ナチュラルハイ』(ちくま文庫)、『ヒーリング・ボディ』(サンマーク文庫)、『聖なる自然治癒力』(浩気社)、『いまなぜ〈代替医療〉なのか』(徳間書店)、『代替医療への道』(渥美和彦氏と共著・春秋社)など。訳書に『人はなぜ治るのか』『バイブレーショナル・メディスン』(日本教文社)、『ワイル博士のナチュラル・メディスン』『癒しのメッセージ』(春秋社)、『癒す心、治る力』『ワイル博士の医食同源』『人生は廻る輪のように』『森の旅人』(角川書店)、『いのちの輝き』(翔泳社)、『奇跡のいぬ』(講談社)など。


長期生存のがん患者に学ぶ

“がん患者学”から見えるもの


柳原和子 (ノンフィクション作家、「がん患者学」著者) 
がん患者学-長期生存者に学ぶ」を上梓させていただき、一年が経過した。驚くほどの反響が医師、看護婦、ほかならぬ患者さんたちから届く。私自身ががん患者として闘病していた時期に欲しかった本を私なりに編んだわけだが、それはほとんど多くの患者の必要としていたものだった、と実感した。
 当然のことに、切実な相談にも たくさん出会う。患者だったころと比べ、こうした患者の真剣、必死な「生きたい」という願いを目の当たりにして、医師も大変なんだろうな、とより深く感じるようになっている。告知された患者、とはたぶん、生を絶対善、基本としている文化、教育で育っている、そちら側にある現代人には理解を超える存在かもしれない、と改めて思う。新しき人々なのだ。しかし、彼らを支える文化、思想はないと言っていい、医 療もまた・・・。すべてが生を絶対善としている発想から生まれ、その方向を目指し て進歩してきている。つまり、現実には究極の救いは現在のところ、ありえない。
 患者自身が、自分たちの体験のなかで生み出していかなければいけないのかもしれない。では、はたして医療は無力なのか?医療は今、患者にとってどのように映って いるのか?患者が求めている医療と現実はいかなるギャップがあるのか?代替医療と呼ばれている医療を、患者はどのように感じ、取り入れているのか?
 NHKのETV2001の協力で私はこのほど全国の女性患者六百人に意識、実態調査を行った。そしてアメリカ、メキシコへの取材を同時に行った。その結果をもとに、医療ががん患者の救いになるにはなにが求められているのか、代替医療、ホリスティック医学との関わりの中で、考えてみたい。

プロフィール
柳原和子(やなぎはら かずこ)
 1950年生まれ。東京女子大学社会学科卒。ノンフィクション作家。これまで、筋ジストロフィー、医療過誤、薬害エイズ訴訟などに深い関心を寄せ、作品を発表してきた。著書には、自らが母と同じがんを患った三年間の体験を徹底的に記録し、同時に末期・再発・進行がんの長期生存者と現代日本のがん医療に警鐘を鳴らす専門家にインタビューした『がん患者学』をはじめ、『「在外」日本人』『カンボジアの24色のクレヨン』(晶文社)、『二十歳,もっと生きたい』(編著、草思社)などがある。


「ホスピス医が語るスピリチュアルケア
         ‐よりよき生を求めて」

           
山崎章郎 (聖ヨハネ会桜町病院ホスピス科部長)

 人間が単に生物としての存在ではなく、まさに人間として存在するとき、その存在の核になるものがスピリチュアリティと言われているものである。したがって様々な理由で追いつめられ、生きる意味を、すなわち存在する意味を見失っているような状況では、そのスピリチュアリティは脅かされていると言える。つまりスピリチュアルペインを感じている状態であると言えるだろう。
 スピリチュアルペインは人生の様々な場面で直面しうるが、死に直面し心身ともに困難な状態の時には、さらに顕著になると思われる。さてスピリチュアルペインを、人間として存在することの意味を喪失したときに、あるいは脅かされたときに感じる苦悩であると考えれば、そのサポートであるスピリチュアルケアは、再び人間として存在する意味を見いだすことができるようなケアと言えるだろう。ホスピスケアの現場から、以上のような観点に立ち、スピリチュアルペインとスピリチュアルケアについての私見を述べてみたい。

プロフィール
山崎章郎 (やまざき ふみお)

1947年、福島県生まれ。千葉大学医学部卒業後、同大学病院、八日市場市民総合病院勤務。院内外の人々とターミナルケア研究会を開催。9110月より、東京小金井市の聖ヨハネ会総合病院桜町病院へ移り、現在ホスピス科部長兼聖ヨハネホスピスケア研究所所長。著書に『病院で死ぬということ』(日本エッセイストクラブ賞受賞)(正・続、主婦の友社、文春文庫)、『ここが僕たちのホスピス』(東京書籍、文春文庫)、『僕が医者として出来ること』(講談社)、『ホスピス宣言』(春秋社)、『河辺家のホスピス絵日記』(共著、東京書籍)などがある。


リラクゼーションタイム

「乳がん術後のリハビリテーション&フィットネス」

梅田陽子 (京都大学総合人間学部非常勤講師)

乳がん手術後にやって来るものは、思いもよらなかった、腕の不自由さや不快感です。それが気持ちを重くさせたり、以前のような快活さをなくさせてしまう事があります。ここでは、乳がんだからと諦めるのではなく、元の機能を回復させ、体力も気力も取り戻し、元気な生活が出来ることを目指しています。具体的には、肩関節の可動域を拡げるストレッチング、筋力を回復させるトレーニング、肥満を予防しスタミナをつける有酸素運動、体と心をほぐすリラクゼーション、腕のむくみに対処するマッサージなどを行っています。「リハビリはけっして苦痛を伴うものではなく、喜 びを伴うものである」この信念にもとづいてご指導しております。参加される方同士の話題も豊富で、笑顔が絶えません。今回は、その一部をご紹介いたします。尚、この活動はNPO法人Re−Vidとして、医師などの専門家により構成されている、乳がんに対応した組織です


プロフィール
梅田陽子(うめだ ようこ)

()トータルベーシック取締役
京都大学総合人間学部非常勤講師
京都大学医学部第二内科健康運動指導士
NPO法人Re-Vid 監事
JBS
日本福祉放送 ディレクター


パネルディスカッション

「がんとホリスティック医療

-代替から統合、そして…」

[司会] 愛場庸雅・黒丸尊治

[指定発言] 帯津良一

(帯津三敬病院名誉院長、日本ホリスティック医学協会会長)

[パネリスト] 上野圭一、柳原和子山崎章郎帯津良一


司会者プロフィール

愛場庸雅 (あいばつねまさ)

1955年大阪府生まれ。昭和55年大阪市立大学卒業。卒後同大学にて耳鼻咽喉科学を専攻。そのなかでも特に専門領域は嗅覚・味覚障害。平成11年より大阪市立総合医療センター勤務(耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科・小児言語科)。趣味は競技オリエンテーリング。家族は妻と犬2匹。ホリスティック医学を勉強し始めて約10年、多くの出会いに感謝しつつ、理想と日常診療のギャップに悩みながら多忙な日々を送っています。2年前、自らの専門領域でもある中咽頭癌を体験し、その病気のくれたメッセージを考えながら生きています。

黒丸尊治 (くろまる たかはる)  

1959年、東京都生まれ。87年信州大学医学部卒。徳洲会野崎病院にて、内科、外科、産婦人科、小児科の研修を3年間した後、90年4月より関西医大心療内科に入局。九州大学心療内科を経て、92年4月より洛和会音羽病院心療内科に勤務。現在同科部長。9711月より坂口山科駅前クリニックにて心療内科外来を受け持っている。特定の理論や療法にとらわれず、患者さんの持つ「心の治癒力」を引き出すことを主眼とした治療を主に実践している。またホリスティック医学協会関西支部を設立。89年5月からは、定期的にホリスティックフォーラムやシンポジウムを開催している。日本心身医学会指導医。日本心療内科学会評議員。日本サイコオンコロジー学会常任世話人。日本ホリスティック医学協会理事、同関西支部長。米国NLP協会公認NLPTMプラクティショナー。著書に『人は自分を「癒す力」を持っている』(ダイヤモンド社)、共訳書に『心理療法・その基礎なるもの』(金剛出版)がある。


指定発言

帯津良一 (帯津三敬病院名誉院長、日本ホリスティック医学協会会長) 

ガンは人間の階層における出来事である。人間の階層とは身体性、精神性、霊性の三つが渾然一体となった人間まるごとが当事者となってくりひろげる場の世界である。
 人間の階層に生まれた病に対しては人間の階層に築かれた人間まるごとの医学をもって、これに当たらなければならない。これまでのように人間の階層より下位の臓器の階層に築かれた近代医学のみを持って、これに当たるのは基本的には正しくない。人間まるごとの医学といえば、まさにホリスティック医学であるが、これはあくまでも理想の医学であって、まだこの世に成就された存在ではない。
 一方、最近台頭著しい代替療法は多かれ少なかれ精神性と霊性にアプローチしようとする方法であるから、さらに統合医学へと向かう世界の潮流は間違いなく人間の階層を目指すものであって、ホリスティック医学へ至る道程として大いに歓迎すべきものである。
 舞台はすでに臓器の階層から人間の階層へとめぐりはじめるとともに、がん治療も個性化、多様化、共生の新時代に向かいはじめたのである。 


プロフィール
帯津良一 (おびつ りょういち)

1936年、埼玉生まれ。1961年、東京大学医学部卒。東京大学第3外科、都立駒込病院外科を経て、1982年、帯津三敬病院院長。2001年、帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会会長、日本ホメオパシー医学会理事長など。著書に「いのちの場と医療」(春秋社)など多数。


当日の写真などできましたら改めてアップいたします。